カステラいちばん。
某コンビニのプライベートブランドのカステラを食べながら、ふと思い出した。
大人になって好きなだけ買えるようになったのに、ずいぶんしばらくぶりに食べたカステラ。
そういえば私、カステラが大好きだったなぁ。
子供の頃はあまり家計に余裕がなくて、大好物でもなかなか食べられなかった。
ましてやお菓子なんて贅沢品だった。
母の実家の近くには菓子店の工場があり、その辺り一面はいつも子供心を大いにくすぐる香りが漂っていた。
そこでは、いわゆるB品の販売もしていて、パンの耳を揚げて砂糖をまぶしたものや、なんだか形が悪くなってしまったようなものなんかがビニール袋に入って、お手頃価格で売られていることがあった。
そして、めったに手に入らない掘り出しもの。
それが「カステラの耳」。
耳、というのは切れ端のことね。
たぶんたくさん出るんだろうけれど、並んでまで買う人がいるぐらい人気だったから、手に入りにくかったんだろうな。
それでもたまに遊びに来る初孫に対して甘々だった祖母は列に並び、祖父は嬉々として財布を開いてくれた。
甘いものに飢えていた子供にとって、大きなビニール袋いっぱいのカステラの耳は、ものすごく嬉しいお宝。
喜んだ私は、有名カステラ店のCMソングを歌いながら踊った。
もちろん言えば、カステラの「本体」も買ってくれたんだろうけど、その頃はひとりで大きな袋を抱えて、むしゃむしゃと耳をかじる方がたぶん嬉しかったんだろうな。
子供の頃は食が細くて心配をかけていたので、例えそれがオヤツであっても、興味を持って食べるものには全力を注いでくれたっけ。
いつの頃からかカステラから興味が離れて、他のものもいろいろ食べられるようになってからもしばらくは、祖父母の家に遊びに行くと、いつもカステラの耳が置いてあった。
だから、私にとってカステラは今でもやっぱり「耳」だ。
そうだった。
先日、そんな思い出話を祖父母としたんだった。
自分でも忘れてしまっているような子供の頃の私をとても鮮明に覚えていて、驚くやら嬉しいやら。
最近のことはとんと忘れてしまっていても、昔のことほどはっきりと覚えているらしい。
カステラのCMソングの一件も、涙を流すほど笑いながら話した。
あとどれぐらい、一緒に思い出話ができるだろうか。
次に行く時は、手土産にカステラを買って行こう。